新型コロナウィルス:拡散するデータのもやもや感

 3月初めにブログを書いてから、4ヶ月もたってしまった。
 オンラインの授業で「データ分析入門」を教えていたりするので、数値やデータが飛び交うのを横目にみて、もやもやが堆積している。このデータはいったい何なんだ?

 少なくとも社会調査では「ゴミ」みたいなデータはいくら精緻に分析しても「ゴミ」しか生まれないと考えられている、と思う。そういう常識を語る人は見当たらない。医学データだからだろうか。シミュレーションするにも、元データがまともでないとどうにもならないのに、誰も気にならないのか?

 非常事態でも常に土日と休日の件数が減るのは公務員や医者の休日がしっかり守られているから。災害時、夜も昼もなく復旧に奔走する人たちとは身分が違うらしい。日常と非日常のクラクラする混在。なぜメディアは指摘せず人々は怒らないのか、謎すぎる。

 オープンデータと仰々しい「東京都_新型コロナウイルス陽性患者発表詳細」からわかるのは、発表日、年齢、性別のみ。区によってはもう少し情報を出しているが、「区で検査した人」で都とは整合がとれないとかで、データの体をなしていない。こんなに狭い日本で、データの定義と発表のしかたをめぐって、自治体の異なる発表が乱立する。みんな移動しているんだし、居住地は感染した場所などなにも語ってくれないのに。新型コロナウィルスのことを考えるための基礎データはないな、とつくづく思う。

 本日、東京はあっという間に過去最高の陽性(患)者が観測されていて、それは夜の街の人だったり、若い人だという。シンプルに考えてみれば、そういう人がいま検査で対象になりやすい。現場に出て厳しい環境で仕事をさせられている人、バイトや派遣、学生なら飲食でアルバイトもしている。オフィスにこもっていたり、リモートワークできず外回りしている若い人は数多いので、当然でもある。

 新型コロナに感染したと報道される人の職業には明らかに特徴がある。有名人のように隠れられない人たち、教員や保育士、介護士、医療関係者など人と接してケアする仕事など。モラル的に少しでも違和感を感じたら医者に行き「ご職業は?」と聞かれて、pcr検査に回される率が高い人たちだ。心配なさそうな職業の人は、「まあ、とりあえず検査しなくてもいいだろう」となるだろうし、本人も検査を望まないので、陽性であっても見つかる確率は低くなる。そこが次なる隠れた感染源にもなる。

 4月までの国の方針では、よほどの熱意とともに保健所に掛け合うか、重症にならないとpcr検査に回らなかったけれども、ランダムにサンプリングしてpcr検査をして調べてみたら、きっと若い人の割合はもっと高かっただろう。夜の街はひっそりと営業を続けてウィルスを培養していたとはいっても、それくらいの闇は日本中のどこにでもある。

 感染していることが見つかったらなじられる恐怖にさらされ、なるべく見つかりたくないという個人の願望と、感染が広まる現実を見たくない社会は、共にあうんの呼吸で、叩いてもさしつかえなさそうなスケープゴードが選ばれた。ホストクラブ、キャバクラ、パチンコ、ビーチ、ライブハウス。真面目なサラリーマンの乗り物である混雑した公共交通での感染、は決してクラスターになることはない。

 闇が深ければcovid-19は明るみに出てバスターされずに生き延びられる。地方で排除され、都会の闇に潜んで隠れなくては生存できない人がたくさん吹き溜まっている東京から、人はどこにも行くあてなどない。「帰ってくるな」といわれる地方には、もう頼まれても帰らなくなる。かくして東京に人は集まり続けて密集する。

 人は見たいものしか見ない。その教えを頭に刻み込んで、できる限りまともなデータを取り知恵を共有しないのなら、間違った解釈がなされて広められる。そのとき、covid-19は誰彼となく刃を向ける。

 ファクターXのおかげで死はそれほど身近にならずにすむと期待しよう。