メルカリとジモティのある世界

 人生も後半戦にはいり、家を小さくするためにモノを手放していたら、新しい世界にはいりこんだ。学生時代から中古で買う、拾って使う、などなどセカンドハンズやリサイクルの世界に熟達していたけれど、おくればせながら、メルカリとジモティにハマっている。

 たった5年くらいの間に世界は様変わりしていた。リサイクルショップにまとめてひきとってもらおう、と思ってももう叶わない。各方面探して電話しても引き取ってくれる先がない。このままでは粗大ごみにするしかない。それはあまりも悲しい!そこで手間はかかるけども、じゃあ始めるか、と「メルカリ」や「ジモティ」に出品すると、あらゆる品物に数分以内に問い合わせが殺到するではないか。。。なんだ、こんなにマッチングがよい人が世の中にはいっぱいいるじゃん。

 どのモノたちも、必要とする人に受け渡すことができた。それがとてもうれしい。手放す人のストーリーと受け取る人のストーリーが取引を通じてマッチングする。どの取引もとっても「気持ちのいい」(ジモティは評価が「気持ちのいい取引ができましたか」なので)。いちいちお互いに評価しあうシステムもどうかなと思うけども、信頼をほかに担保するものはなにもないのだから、まあしょうがないか。

 たぶんこのアプリ取引は人のことをどこかで信用していないとやっぱりできないものなので、そういう人どおしで行われているからだろう。「そんなことやって大丈夫?」という疑心暗鬼の人よりは、「まあ、大丈夫でしょ」という人がやっている取引。きっと変なこともあるんだろうし、困った人もたまにはいるんだろう。けれども、アプリはとてもよくできていて、ちょっとしたチャットのやりとりから、スクリーニングをへてその後の取引につながっている。「複数で人目のあるところで」取引しましょう。まっとうな推奨。

 ついこのあいだのNHKニュースでGDPが下がった理由を「メルカリ」の取引が増えたから、と説明していた。手数料分しかGDP参入されないんだって。ジモティにいたっては、0円とりひきしたらGDPへの反映はほぼ0だ。車で移動するガソリン代くらい?粗大ごみにして新品買わせた方が儲かる人はいるよね。そのうち政府は規制に乗り出すかな、Airbnbみたいに。

 でも、この世界で私たちは確実に豊かさを増しているはず。まずもって、気持ちのいい対面の取引をしたり、チャットを交わしたりして、いらなくなったモノを捨てるに忍びない人と、ほしい人が出会う機会が爆発的に増加している。昔の掲示板、ミニコミ、マスメディアでやりとりする情報量の限界をスマホのアプリは劇的に解消してしまった。

 メルカリは世界に打って出るんだって?さあ、どうなるか。私は難ありだと思う。ジモティが近隣での互酬的取引を支援するにとどめているのに対し、メルカリは手数料で儲けを出し、クロネコヤマトと提携したりして運送システムを整えた。だけれども、こんなに安い送料で確実に全国にモノが迅速に届くシステムなんて、他国に期待するのはやめたほうがいい。そう考えたら世界展開のハードルは高い。

 モノはなるべくなら地元界隈で勝手に対面で取引したほうが、お財布にも、エコ的にもたぶんいい。結局、私もほとんどの取引がジモティで早めに成立したのは、偶然ではなくてそれが合理的な結果だったということなのかな、と感じている。

 モノをほしい人は若い人が圧倒的なのに、スマホを使わない中高年が困って捨てている出品されていないモノたちがたくさんあるんじゃないかと残念でならない。中高年の皆さん是非メルカリとジモティのある世界においでください。普段出会えないいろんな面白いかたがたと会えて、とっても楽しいですよ。