しつけと虐待は紙一重?:北海道の男子置き去り事件

 少しニュースから離れていた間に発見されて大騒ぎになっていた男の子。そうとうにタフな子どもだな、親も育てるの大変だろうな、と想像する。それで、警察は結局児童相談所に通告したけれども、まあ、法律にもとづくと形的にはそうしないと、発見した人の責任が問われるから。今回は親と子双方の発言などをつけあわせてもそう矛盾がないから、「しつけのつもりだった」という、よくあるいいわけがきっと認められるのだろう。
 これでまた、「しつけと虐待の境界がわからない」という学生がよくする質問への答えが難しくなった。深刻な虐待を繰り返す親たちと、今回のような「魔が射した」かのような行動をする親はいったいどこが違うのか。それとも、さして変わらないのか。
 この男子のお父さんは、優しくどこにでもいそうな現代パパにみえる。そして、だからこそ、7歳になった子どもは相当な「悪ガキ」ぶりを発揮していたのかもしれない。車への石投げは確かにやめさせるべき行為だろう。かといって置き去りしていいわけはないが。
 この父子は結局子ども同士のように「ケンカ」していたようにみえる。そして、こういう失敗は私もしたことあるなあ、と思い出した。育児マンガ定番の「親のブチキレ」ってヤツ。だめなんですよ、これをやっては。それに、結局効果がない。でも、親も人間だからついつい、子どもの挑発に乗ってしまうこともある。
 7歳にもなると、ちょっとやそっとの「脅迫」ではなめられる。また、口先だけの「脅迫」を繰り返した結果、「置いていくぞ」と言っても「どうせそんなことしないだろー」と高をくくられると、父の「沽券」にかかわるから、エスカレートしていく。だから、こんな危険な置き去りという手に出てしまったのだろうが、そういうやりとりを続けているのはよろしくない。実際、意外にも7から8歳くらいは虐待発生のピーク年齢でもある。やはり、しつけから虐待へと移行する可能性がある時期なのだから、見過ごすことはできない行為である。
 これを機に親の方に対処の技術を身につけてもらう必要がある。すでに子どもに親がなめられてる様子は「お父さんを許す」といういいかたからも、明らかに伝わってくる。子どもの成長という面で気になる点が散見される。もう少し幼い頃に力関係のバランスをとれていたら、こうはならずにすんだだろうに。
 優しい父のもと、のびのびといえば聞こえはいいが傍若無人に振る舞う子どもはたしかにいる。厳格な父のもと、びくびくしながら人目を気にして大人しく育つ子どもよりはいいようにみえるかもしれない。しかし、どちらの親子関係にも危うさが潜んでいる。「優しさ」というよりも「甘さ」の積み重ねが招いた結果を「激しい懲罰」でリセットしようとする子育ては、日本式育児の特徴だ。やはりそうならないような積み重ね育児を、普段から地道にするしかないという教訓をまた1つ得た。