今回の選挙には家族政策にかかわる争点が表舞台に登場してうれしく思います。ずっと個人的には主張していたことですが、じつは民主党と自民党には横たわっているジェンダー・家族観にこそ大きな差があります。それがずっと隠されたままでした。互いに争点にしてもあまり票にならないと踏んでいたからかもしれません。実際子ども手当が目当てで投票する人は、割合にすると意外に小さいはず。15歳未満人口割合はすでに13.5%まで低下しています。65歳以上が22%ですから、老人票を当て込むならあんまりよい主張ではありません。農業人口も数%にすぎないので戸別補償もたいした票にはならないでしょう。世論調査でも関心がある問題の上位にはかならず年金・社会保障がきます。
結局今回の民主党の公約は、政策の方向転換を象徴するにすぎません。どう変えるのかというと、いろんな側面でOECDで普通程度の福祉国家にしていこうということでしょう。いま現在、家族・教育関係の予算はあらゆる指標でOECD「最低レベル」なのですから。子どもの貧困には、再分配が「逆機能」を持っていることも指摘されています。子どものいない専業主婦世帯に税や年金の恩恵を与えているのに、親が通常働いているひとり親世帯に十分な分配がなされないからです。お金の流れがふつうと逆ってことです。配偶者控除廃止などはだいたい20年前にヨーロッパでは終わった話。目新しい変化ではないのですが、日本は化石状態の家族制度が持続しているので、それなりにインパクトがあるでしょう。
とにかくもうすこし子どもがいる人にバラまくのは当然の政策。それなのに子育て中の人たちの声で、「そんなにもらっていいのかな」みたいな慎重な意見も聞こえてきます。なんと奥ゆかしい日本人の親たち。そうやって子育ては自分たちの仕事!と抱え込んで気負うからこそ少子化しているのですが。ちなみにどう控えめにみても、幼い子を持つ人には月4〜5万円の直接支援があってよいと私は(本で)主張しています。
バラマキには直接政府が個人にまくやりかたと、企業や様々な団体など中間組織を通じて行うやりかたがあります。長年中間組織による分配を信用してきた日本人もついに疑心暗鬼になってしまいました。どっかに消えているんじゃないの?ってことでしょう。いざなぎ越えの景気回復とやらがあったのに、みんな豊かになった気がしなかったんだからあたりまえですよね。どこかにうまい汁を吸った人はいるはずです。それなのに相変わらず「景気回復」すればみんなまた豊かになれる、という主張を繰り返すことができる与党。すごい鈍さですね。家族もこれまでのような「夫」を通じての分配では不安だらけですから。夫を飛ばして子どもにダイレクトに「手当」を届けることにもかなり意味があります。
ああしかし、悲しいことに大学や研究といった問題はあまりマニフェストに書かれていない。モノづくり社会一辺倒に先が見えてきたのだから、そこのところにもう少しバラまいてもらわないと。ここにもOECD最低水準がありますよ、といいたい。じゃあ何が最高水準かって、それはもちろん公共事業。